はじめに
この記事では、品質管理で最もよく使われるX̄-R管理図を例に、管理限界線の計算方法と工程の見方を解説します。
管理限界の説明の前に、管理限界と規格限界について説明していきます。
規格限界とは?
製品寸法
目標値:100mm
上側規格限界(USL:Upper Specification Limit):110mm
下側規格限界(LSL:Lower Specification Limit):90mm
この規格は、「お客様との約束」です。
この範囲外はすべて不良です。
例えば
89mm → 不良
90mm → 合格
100mm → 合格
110mm → 合格
111mm → 不良
となります。
規格内なら問題ないのか?
実はそうとは限りません。
例えば測定結果が
100
101
102
103
104
105
106
107
108
109
だったとします。まだ規格内です。しかし、明らかに上方向へズレています。
このまま放置すると不良品が発生します。
つまり、品質管理では
不良品が出てから対応するのではなく
不良品が出る前に異常を発見
することが重要です。そのため、管理限界線を設定します。
管理限界線とは?
そこで設定するのが
- UCL(Upper Control Limit:上方管理限界線)
- CL(Center Line:中心線)
- LCL(Lower Control Limit:下方管理限界線)
下記はイメージです。
USL ----------------
UCL ----------------
CL ----------------
LCL ----------------
LSL ----------------
管理限界線は
工程の異常を発見するための基準
になります。
イメージ
規格限界(お客様との約束)
90 ------------------------------ 110
管理限界
94 -------- 100 -------- 106
管理限界は規格限界よりも内側に設定されます。
この規格において、
110になってから慌てる → 遅い
と考えます。
例えば、
100
102
103
104
105
106
となったときに、
「あれ?何かおかしい」
と気づきたい。そのために、管理図を使います。
管理図は、工程が安定状態にあるかどうかを調べるために設定します。
X̄-R管理図とは?
X̄-R管理図は
2つの管理図を組み合わせたものです。
X̄管理図
↓
平均値の変化を見る
R管理図
↓
ばらつきの変化を見る
つまり、
平均は変化していないか?
ばらつきは大きくなっていないか?
を同時に監視します。
問題:X̄-R管理図を作ってみよう
5個ずつ測定した結果をまとめました。
| 群 | 測定値 |
|---|---|
| 1 | 99,100,100,101,100 |
| 2 | 100,99,101,100,100 |
| 3 | 99,100,101,100,100 |
| 4 | 99,100,102,100,99 |
| 5 | 100,101,100,99,100 |
Step1 平均値を求める
各群の平均
| 群 | X̄ |
|---|---|
| 1 | 100 |
| 2 | 100 |
| 3 | 100 |
| 4 | 100 |
| 5 | 100 |
全体平均
Step2 レンジを求める
レンジ
=最大値−最小値
| 群 | R |
|---|---|
| 1 | 2 |
| 2 | 2 |
| 3 | 2 |
| 4 | 3 |
| 5 | 2 |
平均レンジ
Step3 管理図係数を確認する
サンプル数n=5
なので係数表から
| n | A₂ | D₃ | D₄ |
|---|---|---|---|
| 5 | 0.577 | 0 | 2.114 |
を使用します。
管理図係数とは?
ここで
「なぜA₂やD₄を掛けるの?」
と思う人もいるでしょう。
実はレンジはサンプル数によって大きさが変わります。
例えば、
2個測定した場合と
10個測定した場合では
10個測定した方が極端な値を拾いやすくなります。
その影響を補正するために作られたのが管理図係数です。
QC検定では暗記する必要はなく、
問題文で与えられる係数表を使えば十分です。
Step4 X̄管理図の管理限界線を求める
公式
計算
結果
UCL = 101.27
CL = 100
LCL = 98.73
Step5 R管理図の管理限界線を求める
公式
計算
結果
UCL = 4.65
CL = 2.2
LCL = 0
この工程は安定しているのか?
X̄管理図
UCL 101.27
平均値 100
LCL 98.73
すべての平均値は範囲内
R管理図
UCL 4.65
平均レンジ 2.2
LCL 0
すべて範囲内
したがって、
工程は統計的管理状態にある
と判断できます。
R(レンジ)は「最大値−最小値」で求めるばらつきの指標です。X̄管理図が平均値の変化を見るのに対し、R管理図は工程のばらつきが大きくなっていないかを監視します。平均値が同じでも、ばらつきが増えると不良品が発生しやすくなるため、品質管理ではX̄管理図とR管理図をセットで使用します。さらに、レンジ(R)は負の値を取らないため、サンプル数が少ない場合は下方管理限界線(LCL)が0になることが多くあります。そのためR管理図では、主に上方管理限界線(UCL)を超える異常がないかを確認します。
そもそもUCLの外に出る確率は?
正規分布を前提にすると、
±3σの外側は
約0.27%
です。
つまり
1000個測定すると
約2~3個くらいは
偶然でも出ます。
だから
管理図は
1点出たら絶対異常
ではなく、
異常原因がある可能性が高い
という警報なのです。
現場ではどう考える?
例えばある製品を加工している工程で、
100.0
100.2
99.9
100.1
99.8
106.5
が出た。
製品はまだ規格内かもしれません。
しかし
- 刃具欠損
- 測定ミス
- 材料異常
- 設備異常
などが疑われます。
そこで原因調査を行います。
管理図のUCL・LCLは「合格・不合格」を判定する線ではありません。工程が通常のばらつきの範囲内で動いているかを確認するための線です。そのため、UCLを超えたからといって直ちに不良品とは限りません。一方で、規格内だからといって安心もできません。品質管理では、不良品が発生する前に異常の兆候を発見することが重要であり、そのために管理図が使われます。
なぜ管理図を作るのか?
今回の工程では
- 平均100mm
- ばらつきも安定
していました。
だからこそ、
CpやCpkを計算して
工程能力を評価できます。
もし管理図で異常が見つかった場合は、
Cpを計算する前に
設備や作業条件を調査する必要があります。
現在はExcelや品質管理ソフトによって標準偏差を簡単に計算できるようになりました。そのため、標準偏差を直接利用するX̄-s管理図なども使われています。しかし、X̄-R管理図は計算が分かりやすく教育にも適しているため、現在でも多くの製造現場で活用されています。
まとめ
- 規格限界(USL・LSL)はお客様との約束
- 管理限界(UCL・LCL)は工程異常を発見するための基準
- X̄管理図は平均値の変化を見る
- R管理図はばらつきの変化を見る
- 管理図で工程の安定を確認してからCp・Cpkを評価する
品質管理では、
「管理図で異常を見つける」
↓
「工程能力を評価する」
↓
「改善活動につなげる」
という流れで進めます。
次の記事では、管理図で安定が確認できた工程を対象に、Cp・Cpkを使って工程能力を評価する方法を解説します。




